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リアルな研究者の卵~理系大学生へ~

理系大学生(博士課程)です。備忘録的なことを記事にしています。主に研究や物理の考え方について

目に見えないもの

結構まじめな、研究室に入った後の実験のお話です。

これから研究をする人にとって、絶望感を与えるかもしれませんし、やる気をある意味、持ちあげるかもしれません。そんな記事です。

 

   

 さて、研究をして、これだけは知っておいてほしいことがあります。

特に実験系の研究室の人へ。

 

 

測定して、得られるデータは、何ですか?

いわゆる、「一次データ」と言うやつです。それは、何でしょうか?

大抵の人が、「電圧」や「画像」です*1

   

それをどのように処理しますか?

それを処理することによって

「電圧」⇒「抵抗値」「電流値」「周波数」

「画像」⇒「速度」「大きさ」

などが得られます。

 

それをどう理解しますか?

ここでようやく、今までに培ってきた知識や考察が生かされます。

あんな参考書にこんな記述があった、この参考書にこういう計算が乗っていた, etc...

ここの影響によってこの現象が引き起こされているのではないか。

この論文でこういう効果が指摘されているからここにも当てはまるのではないだろうか。 

おそらく、最も楽しい側面です*2。理由は、「自分の実験に当てはまる合理的な理論を作っていくから」です。

   

ここまでたどり着くには?

そして、事実として知ってほしいのが、「どう理解するか」まで到達するのには、時間と労力をかけて、「それなりの量のデータ」を取る必要があるのです。

 

 なぜこれをしなくてはいけないのか?

簡単な答えで、「測定できるものしか、我々は観測できないから」です。測定や解析を通じて私たちが直接知ることができるのは、ここまでなんです。

「入力電圧をこう変化させると出力電圧がこう変化した。」(測定)⇒「それをフーリエ変換するとここにピークが立つ」(解析)⇒「これは、あれが起きていることに起因しているはずだ」(考察)なんです。「何が起きているか」は所詮推察の域を出ないのです*3

誰の目にも、「確かにそれならそうだ!」と納得してもらえるような「データ」を得なければならないのです。そうすることで、論文になって、自分の成果になります。

 

間違っていたり特殊性が強すぎるものはいずれ淘汰されていきますし、普遍性があったり重大なものは残り、さらに世界中の天才たちが研究していきます。

 

なぜこの話をしたのか

私、学生時代は「理論」の本を読む、理論を知るのが大好きでした。自分でもこういうことがやりたい、と感じて勉強をしまくっていたものです*4。でも、実際に研究室で研究を始めてみたら、そんな理論的なことは、ほとんどやりませんでした*5。後はひたすら、条件を変えてデータを取る、ただそれだけでした。それだけの毎日でした。

「自分は、今までわからなかったことを明らかにしたいのではなく、ただ、人がまとめた理論を知るのが好きなだけだったのだろうか。」

とひどく落ち込んだりしました*6。そういう感情を持つ場合が多いので、気を付けてください、というメッセージです*7。もちろん、いろんな理論を知っていることで、他分野の人とも比較的話はしやすいですし、博士に進学するうえではメリットは大きいと思います。

 

伝えたいこと

「どう理解するか」までたどり着くまでの過程が一番、研究をしていくうえで精神的にきついところだと思います。実験の方向性や条件がおかしければ容赦なくデータは使われません。解析しても何も情報がなければ、何もやらなかったのと一緒だと感じるかもしれません。でもそれはある意味、研究における日常茶飯事です。

 

「そのデータは自分の腕が悪いのか、実験の方向性が悪いのか。」

 

「何がよくて何が悪いのかわからない。」

 

そんな時代*8から、実験を進め、考え方やコツをつかんで、そのうえで、自分で解決策を切り開いていく*9

 

そして問題が解決して議論に値するデータが取れた時、最高に面白いな、と感じるのです。

 

   

 

雑談

理論の証拠を集める話に関して、外村彰氏は相当苦労されたそうです。詳しくは本などで調べてみてください。いちゃもんのような注文の嵐をかいくぐって、正式に、「アハラノフ=ボーム効果が実在すること」を証明した偉大な実験家です。

*1:画像データも電圧によって得られるものですが一応。

*2:私は実験方法を考えたうえで実行するのも好きです

*3:でもまぁ言い換えればこれまでの科学は先人たちの実験結果や淘汰されてきた理論の上に成り立っている、ということです

*4:工学部でしたが

*5:最初に実験の仕組みを知るために習ったぐらい。今思えば学部生に理論の考察なんてやらせるわけないのですが。

*6:自分が今までやってきたことが無意味に感じて

*7:周りにはそこに悩んでいた、気が付いてやる気がなくなってしまった人が数人いました。

*8:学部生

*9:時にはボスの理論と戦い、ボスの理論を否定しながら