リアルな研究者の卵~理系大学生へ~

理系大学生(博士課程)です。備忘録的なことを記事にしています。主に研究や物理の考え方について

研究室でどうやって生きてきたか4~研究色の違い~

 

私、全く毛色の異なる二種類の研究室に属してきました。

半導体物性高分子物性です。

これらを通して感じたことを共有できたらなと思います。

 あ、研究室がどんなところだったか、というよりは研究に対する姿勢、背景がどんなものか、についてです。

   

   

 

 

半導体物性のスタンス

 物性物理学、量子力学統計力学などの力により、理論的な解析が進んでいる

主に量子力学の発見によって、トンネル効果やバンドギャップの存在などの電子の動き方、存在量などが理論的に予測され検証・応用とされてきました。金属物性から始まり、半導体物性にも理論はどんどん適用された背景があり、わからないことは少ないのではないだろうかと感じます。

 

もちろん、わからないことはまだまだたくさんあります。金属の導電性は、なぜ不純物を少量*1混ぜるだけで著しく低下するのか、酸化物超伝導はなぜ起こるのか、などですね*2

 

まぁ、それを補う考え方、理論を見つけていくのが物理ですね。

Ashcroft & Mermin "Solid State Physics"に自由電子モデルの成功とそれだけでは説明できないことが書かれています。

 

周辺の測定環境も信頼のおける精密なものがそろっている

これらの測定を可能にしているのが、精密で信頼のおける測定機器です。半導体の研究を通して思い知ったのは、非常に優秀な測定機器たちです。特に電圧源電圧計です。昨今では制御された電圧を対象に与えることなんて簡単にできます。例えば、0.5秒で電圧を10 mVずつ上昇させながら、電圧を測定する、なんてのは朝飯前です。交流で20 Hzの電圧を与えながら、出力される電圧の周波数特性を取得する。なんてこともできます。簡単に。しかも、設定さえすればあとは待っていればデータが取れます。磁場を制御しながら周波数を変えて出力を想定して…あっさりできます。

ノイズも、同軸ケーブル、ツイストペア、四端子測定、、、様々な方法で減らす努力がなされ、共有されてきました。

 

ゆえに

かなり調べられている印象。今では半導体の物性そのものの研究というよりは、それらを組み合わせて新しい物性の測定、統計性の測定などが行われている印象でした。

 

 

   

 高分子物性のスタンス

理論的な側面

一方こちらは、半導体と違って結晶を作っていなければ、理論的にもあまり進歩していません*3

ノーベル賞も、高分子物性の分野ではほとんどいなかったと記憶しています。

やはり、構造的にきっちりと決まった形を持っていない*4、という点が理論的な解析のむつかしさを示している気がします。 

 

測定について

やはりというか、半導体系に比べればまだまだです。

測定に関しても、導電性高分子の測定ならいざ知らず、高分子の物性として特徴的な、弾性や粘性の測定はまだまだ誤差、ノイズともに大きいですし、バルク系しか自動化されていません。まぁ、高分子自体、マクロな場所の違いで物性が変わってしまうので、仕方ないと言えば仕方ないです。

画像を見て形状を判断、だったり、一つのデータを得るためにサンプルをいちいち作り直したり、と苦労があるのです。

 

つまり

まだまだ理論的にもわかっていないことだらけです。わからないことが多すぎて、仮説をいちいち自分で解明したりする必要が出てきたりします。

 

 まとめ

以上が、私が感じた半導体物性と高分子物性の違いです。

これだけ違いがあるせいで、半導体では「理論値がこれだからこの値の差は00から生み出されている」とかいう話が出るのに対し、高分子では「この依存性を対数グラフにプロットするとこの係数が得られるんだけど何に起因しているんだろう?」という感じです。

 

人によってどこに面白みを感じるかはそれぞれですが、私は二種類経験できて両方とも面白いと思いました。

これからいろんなことを勉強していく大学生や、研究を始める学生に何かヒントになればうれしいです。

 

明るい過去の記事です。

www.physine.tech

 

暗い過去の記事です

www.physine.tech

*1:数%以下

*2:確か。まだまだありますが

*3:私自身、私の研究がまだ調べられていなかったことに驚いたくらいです

*4:誰でも同じものを作れるわけではない